冷熱衝撃試験機の導入を検討している方に向けて、装置タイプの違い、仕様の見方、設置条件、使用時の注意点を順に解説します。
冷熱衝撃試験機は、高温槽・低温槽・試験槽の3槽で構成されます。高温槽と低温槽をあらかじめ予熱・予冷しておき、試験槽に吹き込む風をダンパーで切り替えて、試料に高温と低温を短時間で交互に与えます。試料室の上部に高温槽、下部に低温槽を配置した装置もあり、熱衝撃を自動で連続的に繰り返せます。
ダンパ切替式は、テストエリアが動かない試料静止型です。移動による振動ストレスが試料にかからず、通電用の配線が絡まったり切れたりする心配もありません。重量物や大型の試料の試験にも向いています。昇降式は、試料そのものを高温槽と低温槽の間で昇降させ、短時間で温度を変える方式です。テストエリアの移動時間を10秒以内に収めた機種もあります。
参照元:エスペック株式会社「冷熱衝撃装置 TSAシリーズ」(https://www.espec.co.jp/products/env-test/tsa/)
参照元:ユーロフィンFQL「熱衝撃試験・サーマルショック」(https://www.eurofins.com/ja-jp/materials-engineering-sciences/engineering-testing-services/equipment/thermalshock/)
2ゾーン方式は高温と低温を交互に繰り返す方式で、3ゾーン方式はその間に常温さらしを挟めます。MIL-STD-202GやEIAJ ED-2531B Naのように常温さらしを規定する試験規格があるため、準拠したい規格が常温さらしを求めるかどうかで方式を選びます。
参照元:広島県「熱衝撃試験機」(https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/29/1136heatshock.html)
参照元:JFEテクノリサーチ「冷熱衝撃試験」(https://www.jfe-tec.co.jp/download/pdf/3E2J-017-00.pdf)
より高い熱ストレスを与えたい場合は、液体を熱媒体とする液槽式も候補になります。気槽式より温度変化が速く、短時間で試験結果を得られます。一方で、ブライン液(液体の熱媒体)の消費量などランニングコストの管理が必要です。試料の大きさや重量にも制約があり、試料かご寸法W170×H170×D285mm・最大重量5.0kgといった装置もあります。
参照元:イプロスものづくり「液槽冷熱衝撃装置(エスペック株式会社)」(https://pr.mono.ipros.com/espec/product/detail/2000576339/)
参照元:ユーロフィンFQL「熱衝撃試験・サーマルショック」(https://www.eurofins.com/ja-jp/materials-engineering-sciences/engineering-testing-services/equipment/thermalshock/)
最初に確認したいのは、自社が準拠すべき規格(社内規格や顧客指定規格を含む)の温度条件を、装置のさらし温度範囲でカバーできるかどうかです。たとえばJASO D 014-4は高温+65~+160℃・低温-20℃または-40℃、IEC 60068-2-14は高温+70~+200℃・低温-5~-65℃が条件範囲です。これを装置の範囲(例:高温+60~+200℃、低温-70~0℃)と突き合わせます。IEC 60068-2-14 NaやMIL-STD-883Lなどの規格試験への対応を明示している機種もあります。
参照元:JFEテクノリサーチ「冷熱衝撃試験」(https://www.jfe-tec.co.jp/download/pdf/3E2J-017-00.pdf)
参照元:エスペック株式会社「冷熱衝撃装置 TSAシリーズ」(https://www.espec.co.jp/products/env-test/tsa/)
耐荷重は、試験槽全体と棚1枚あたりで別々に定められています。テストエリア650×460×670mmで総耐荷重50kg、試料カゴは1枚あたり17kgという例や、棚網1枚あたり5kgまでという例があります。試料の数・重さ・載せ方まで想定して確認しましょう。
参照元:広島県「熱衝撃試験機」(https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/29/1136heatshock.html)
参照元:宮城県産業技術総合センター「熱衝撃試験機」(https://www.mit.pref.miyagi.jp/wp-content/uploads/2021/02/8_C_netusyouge.pdf)
カタログに載っている復帰時間は、条件付きの値です。-65⇔150℃で10分以内という値は試料26kg、-40⇔125℃で5分以内という値は試料16kgで確認された例です。復帰時間を「設定値±2℃以内に到達する時間」と定義している機種もあります。
参照元:JFEテクノリサーチ「冷熱衝撃試験」(https://www.jfe-tec.co.jp/download/pdf/3E2J-017-00.pdf)
参照元:長崎県「冷熱衝撃試験装置」(https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2019/01/1547098665.pdf)
通電しながら抵抗変化などを測る場合は、ケーブル孔の形状・サイズ・位置が配線に合うかを確認します。丸孔型50Φを標準装備し、フラットケーブル用の長孔型をオプションで選べる機種もあります。試料室の側面にケーブル孔を設け、通電や特性値の測定をしながら試験できる装置もあります。
参照元:エスペック株式会社「冷熱衝撃装置 TSAシリーズ」(https://www.espec.co.jp/products/env-test/tsa/)
参照元:大阪産業技術研究所「温度変化試験(温度急変)のための冷熱衝撃試験装置」(https://www.orist.jp/technicalsheet/9019.PDF)
小型の機種でも、AC200V三相・最大負荷電流26Aの電源を必要とするものがあります。設置前に受電設備の容量を確認しておきましょう。冷却方式には空冷式と水冷式があり、水冷式では冷却水の供給設備も必要になります。冷凍機の圧力や冷却水の温度を計装画面で確認できる機種であれば、日常点検の負担を減らせます。
参照元:イプロスものづくり「昇降式『小型冷熱衝撃装置TSE』(エスペック株式会社)」(https://pr.mono.ipros.com/espec/product/detail/2000576342/)
参照元:日鉄テクノロジー「気槽式温度サイクル試験」(https://www.nstec.nipponsteel.com/files/AMM-1701.pdf)
参照元:エスペック株式会社「冷熱衝撃装置 TSAシリーズ」(https://www.espec.co.jp/products/env-test/tsa/)
設置場所の室温は、運転条件や設定できる温度に直接影響します。運転可能な外囲温度を0~+40℃とする機種、高温さらしの下限を「外囲温度+50℃」とする機種、80℃以下の高温設定は周囲温度20℃以下のときだけ可能とする機種などがあります。扉の開閉方式で必要なスペースも変わります。上下スライド扉の機種なら、開閉スペースを気にせずに設置できます。
参照元:イプロスものづくり「昇降式『小型冷熱衝撃装置TSE』(エスペック株式会社)」(https://pr.mono.ipros.com/espec/product/detail/2000576342/)
参照元:長崎県「冷熱衝撃試験装置」(https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2019/01/1547098665.pdf)
参照元:エスペック株式会社「冷熱衝撃装置 TSAシリーズ」(https://www.espec.co.jp/products/env-test/tsa/)
試料の温度は、槽内の雰囲気温度より遅れて変化します。そのためサイクル時間を短くしすぎると、槽内が設定温度に達しても試料の内部が届かないことがあります。+85℃・-40℃(各30分)の実測例では、雰囲気温度は数分で規定温度に達しましたが、ファンモーターのコア部は規定温度まで届きませんでした。試料の温度はデータロガーなどで別に測定し、さらし時間を決めましょう。
参照元:大阪産業技術研究所「温度変化試験(温度急変)のための冷熱衝撃試験装置」(https://www.orist.jp/technicalsheet/9019.PDF)
試験条件によっては、デフロスト運転(除霜運転)の設定が必要になります。長時間のサイクル試験では、除霜にかかる時間を見込んでスケジュールを組みましょう。低温側の霜付きを防ぐ機能をオプションで用意し、除霜の時間と電力を減らせる機種もあります。
公設試験機関の機器開放では、電池やバッテリー、発熱・発火の恐れがあるもの、臭気の強いもの、揮発性のあるものを利用不可とする例があります。自社で導入してこうした試料を試験する場合も、安全対策や対応できる装置仕様を事前にメーカーへ確認しましょう。
冷熱衝撃試験機は高額な装置です。購入の前に、公設試験機関の機器利用やメーカーの受託試験・レンタルで条件出しを行い、必要な仕様を固める方法をおすすめします。1時間550円で利用できる機関もあり、研修を受けなくても簡単な説明を受ければ利用できる機関もあります。
参照元:埼玉県産業技術総合センター「冷熱衝撃試験機(川口)」(https://www.pref.saitama.lg.jp/saitec/kikiriyo/kaihokiki/hyokashiken/renetsushogeki.html)
参照元:宮城県産業技術総合センター「熱衝撃試験機」(https://www.mit.pref.miyagi.jp/wp-content/uploads/2021/02/8_C_netusyouge.pdf)
参照元:エスペック株式会社「冷熱衝撃装置 TSAシリーズ」(https://www.espec.co.jp/products/env-test/tsa/)
冷熱衝撃試験機を選ぶときは、まず準拠すべき規格の温度条件と常温さらしの要否から、ダンパ式・昇降式・液槽式や2ゾーン・3ゾーンといった方式を絞り込みます。次に、テストエリアの寸法、耐荷重、温度復帰時間の前提条件、ケーブル孔を確認します。あわせて、電源容量、冷却方式、設置場所の室温も事前に確認しておきましょう。仕様を決めきれない場合は、機器開放や受託試験で条件出しをしてから購入するとよいでしょう。



※1 オプションのタンクを増設した場合の連続運転時間
※2 参照元:【PDF】安定性試験チャンバー|ナガノサイエンス公式(https://www.naganoscience.com/ja/wp-content/uploads/2023/11/NST_2023all_1127.pdf)