医薬品や電子機器の品質管理において、クリーンルーム内に恒温恒湿器を導入できるか悩む担当者は少なくありません。本記事では、一般的な恒温恒湿器を設置する際の発塵や排熱などのリスクと、クリーン環境に対応できる機器の種類、導入時に確認すべきチェックポイントについて、適切な機種選びの観点から詳しく解説します。
クリーンルーム内に一般的な恒温恒湿器を導入する際、もっとも注意すべきなのが機器から発生する気流と熱です。清浄度が厳格に管理された空間では、わずかな気流の乱れや温度変化が製品の品質に悪影響を及ぼすため、一般的な機器をそのまま設置することは推奨されません。
多くの一般的な恒温恒湿器で採用されている「空冷式」は、機器内部の排熱をファンモーターを使って直接大気中に放出する仕組みです。この方式をクリーンルーム内で使用すると、ファンによる強力な気流が発生し、ホコリや微粒子が舞い上がって発塵の原因となってしまいます。
さらに、多量の排熱によって室内に熱がこもりやすくなる点も大きな問題です。室温が上昇すると、恒温恒湿器自体の冷却能力が低下するだけでなく、クリーンルーム全体の空調システムにも過度な負荷がかかり、機器の能力低下や環境悪化を招くリスクが高まります。
前述した発塵や排熱の問題をクリアし、クリーンルーム内にも安全に設置できる恒温恒湿器には、大きく分けて二つのアプローチが存在します。ここでは、クリーンルームへの導入に適した「水冷式恒温恒湿器」と「HEPAフィルター搭載型の恒温恒湿器」の具体的な仕様やメリットについて、それぞれ詳しく解説していきます。
水冷式の恒温恒湿器は、排熱にファンを使用せず、水と間接的に熱交換を行う仕組みを採用しています。大気中に風を放出しないため、クリーンルーム内で気流を乱すことがなく、発塵リスクを大幅に抑えられるのが最大のメリットです。また、排熱が直接室内に放出されないため熱がこもる心配もありません。ただし、導入にあたっては注意点もあります。機器本体とは別に、冷却水を安定して供給するためのクーリングタワーや冷却水配管といった専用の設備工事が別途必要になるため、事前の設計と予算計画が重要です。
機器自体がクリーン環境の維持に対応しているのが「HEPAフィルター搭載型」の恒温恒湿器です。このタイプは、耐久性に優れた高性能なHEPAフィルターを採用しており、機器内部や周辺の空気を浄化しながら温度と湿度を制御可能です。専用に設計されたクリーン恒温恒湿器の中には、ISOクラス5相当の高い清浄度で運用できるモデルも存在します。発塵を抑えるだけでなく、機器が積極的に清浄空間を作り出すため、最先端の研究や厳格な品質管理の現場に適しています。
クリーンルームに対応した恒温恒湿器を選ぶ際は、単に機器のスペックを見るだけでなく、自社の環境や目的に完全に適合しているかを慎重に判断する必要があります。
クリーンルームに求められる清浄度(ISOクラス)は、業種や製造する製品によって厳格に規定されています。例えば、微細な構造を持つ電子部品工場ではクラス5〜7、より厳しい清浄度が求められる半導体工場であればクラス3〜5といったように、必要なクリーンレベルは異なります。そのため、導入を検討している恒温恒湿器が、自社の規定するISOクラスの要件を満たせる仕様であるか、事前に機器スペックを通じて入念に確認することが非常に重要です。
機器の内部だけでなく、作業スペースを含めた室内全体を一定の温度と湿度に保ちたい場合は、機器の導入ではなく「恒温恒湿クリーンルーム」そのものを設計・構築するという選択肢があります。この手法では、プレハブパネル工法による気密性の高い断熱パネルで空間を囲い、専用の精密空調システムを組み合わせます。これにより、空間全体で温度や湿度の厳しい要求精度を満たしつつ、清浄度も維持できる理想的な環境を構築できます。
クリーンルームへの恒温恒湿器導入では、機器の排熱や気流による発塵リスクを避けるため、水冷式やHEPAフィルター搭載型の機種選定が重要です。また、自社の業種に求められるISOクラス基準を事前に確認し、必要に応じて室内全体を精密空調で制御する恒温恒湿クリーンルームの設計も検討するなど、目的に合った適切な設備投資を行いましょう。



※1 オプションのタンクを増設した場合の連続運転時間
※2 参照元:【PDF】安定性試験チャンバー|ナガノサイエンス公式(https://www.naganoscience.com/ja/wp-content/uploads/2023/11/NST_2023all_1127.pdf)