自動車部品の環境試験では、ECUの高温耐久性、インバータの発熱対応、センサーの結露耐性など、部品の搭載位置や機能によって再現すべき条件が厳格に定められています。
本記事では、ISO 16750やJASO規格などで求められる代表的な評価手法を整理し、EV化・電子化が進む現代の自動車開発に適した試験選定のポイントを解説します。
部品が長期間にわたり性能を維持できるかを確認し、過酷な実使用環境下における「機能安全性」と「信頼性」を証明することです。
自動車は砂漠の酷暑から寒冷地の極寒、走行振動、沿岸部の塩害など、極端なストレスにさらされます。これらの条件を実験室で再現し、ISO 16750(道路運送車両の環境条件)やLV 124(欧州OEM共通規格)といった国際規格への適合性を検証することは、市場でのリコールを防ぐための必須防衛線となります。
一定の温度・相対湿度を長時間保持し、部品の吸湿・腐食性要因による劣化や動作安定性を評価する試験です。試験中は温湿度を変動させず、定常に保ちます。
電子部品(ECU、センサー)の長期信頼性の確認や、内装樹脂部品の変化・劣化などを検証するために行われることが多い試験です。
急激な温度変化に対する部品の耐久性を評価する試験です。部品を高温槽と低温槽の間に急速に移動させ、高速な温度変化を繰り返し与えます。
異なる材料の膨張・収縮差によって引き起こされる、ハンダのクラックや部品の破損、シールの劣化といった不具合が生じないかの検証に用いられる方法です。
温湿度の変化と振動を同時に加え、単一の試験では見つからない不具合を検出するための試験です。
恒温恒湿槽と振動試験機を組み合わせ、実走行に近い過酷な状態(温度変化中の振動など)を再現。振動によるコネクタの接触不良が、高温下でさらに悪化するかどうかなど、複数の要因が絡み合う故障モードを評価するために行われます。
部品の耐食性(サビにくさ)を評価する試験です。専用の試験槽に部品を入れ、塩水(塩化ナトリウム溶液)を連続的または周期的に噴霧し、腐食の発生度合いを意図的に早めて確認します。
塩水噴霧試験が用いられるのは、沿岸部や降雪地帯で使用される足回り部品・ボルト類・メッキ部品の耐久性検証や、塗装・表面処理の品質保証などです。
ECUやパワー半導体、インバータなどは、試験中に通電(稼働)させるため、部品自体が発熱します。
この熱(熱負荷)を冷却しつつ、所定の温度まで下げる能力がないと、目標温度に到達しないトラブルが発生します。選定時は「空荷」のスペックではなく、「試料の発熱量(W数)」を考慮した実効スペックを確認することが不可欠です。
試験体のサイズや数量に加え、搬入経路や作業環境などの考慮が必要です。槽の内寸が十分でも、開口部が狭く搬入できない、床荷重が不足して設置できないなどの問題が起こり得ます。
例えば、人が入って配線や設置を行う場合は作業空間を確保できるウォークイン型を選ぶといった、実運用を想定した選定を行いましょう。
例えば、将来的に温湿度試験と振動試験を組み合わせた複合環境試験を行う可能性が想定される場合には、拡張できるかどうかも装置選定において見るべきポイントです。
他装置とドッキングできる構造か、配線ポート・穴加工などの改造が容易な設計かどうかなどを確認。初期段階から拡張性を考慮することで、試験追加の際も買い替えを避け、長期的なコスト効率を高められます。
環境試験を効率的に進めるには、試験条件の組み立て方とスケジュール設計が重要です。温度や湿度の変更のたびに調整や待機が発生すると、1回の試験ごとの時間が積み重なって大きなロスに。
「条件が近い試験をまとめて行う」「設定変更の手順を整理しておく」など、日々の段取りを最適化するだけでも稼働率は大きく向上します。
環境試験では温度や湿度を個別に評価することが多く、走行時に同時発生する振動や急な温度変化を再現できない場合があります。
試験設計の段階で温湿度と振動を組み合わせた「複合環境試験」を計画に取り入れれば、実際の使用状況に近いストレスを再現可能。評価の信頼性を大きく高められます。
同じ条件で試験を行っても、センサーの精度や槽内の温湿度分布に偏りがあると結果が安定しません。温湿度分布を定期的に確認し、センサー校正や配置ルールを整備することで、試験の再現性を高められます。
「試験では問題がなかったが、販売された製品に不具合が起きる」といったケースがあります。試験と、実際の使用とで環境プロファイルに乖離があるために生じる問題です。
走行データや使用状況を分析し、実際の環境プロファイルに近い条件を再設定することが欠かせません。現場データを取り入れた試験設計に変えることで、開発段階から市場トラブルの発生を防止できます。
自動車部品の環境試験は、安全と品質を証明する必須工程です。試験結果の信頼性向上のため、複合試験など目的に応じた適切な試験法を選定することが求められます。データ管理を視野に入れ、効率的な運用設計と適切な機器選定を行うことが重要です。
環境試験の課題をクリアする恒温恒湿器を選ぶには、各メーカーの得意分野と活用シーンを知ることが大切です。このメディアでは、評価担当者が条件に合うメーカーを見極められるよう、各社の強みを整理して紹介しています。


※1 オプションのタンクを増設した場合の連続運転時間
※2 参照元:【PDF】安定性試験チャンバー|ナガノサイエンス公式(https://www.naganoscience.com/ja/wp-content/uploads/2023/11/NST_2023all_1127.pdf)