環境試験や耐久性試験に不可欠な恒温恒湿器(恒温恒湿槽)。製品の信頼性を担保するためには、装置がどのように温度と湿度を制御しているのか、その原理を理解しておくことが重要です。本記事では、恒温恒湿器が槽内環境を保つ具体的な仕組みと、運用のポイントについて解説します。
恒温恒湿器は、密閉された空間(槽内)の温度と湿度を、設定された一定の値に保つための装置です。その内部では、センサーによる計測、コントローラーによる判断、そして加熱・冷却・加湿・除湿を行う各機器の動作という一連のサイクルが絶えず行われています。ここでは、その具体的な制御プロセスと構造について解説します。
恒温恒湿器が目的の環境を作り出すためには、主に以下の4つの要素を制御しています。これらが相互に働き合うことで、高温・低温、高湿・低湿といった多様な環境試験が可能になります。
加熱器(ヒーター)を使用します。電気ヒーターなどで槽内の空気を温め、設定温度まで上昇させます。
冷却器(冷凍機や熱交換器)を使用します。冷却媒体(水やガス)を循環させ、熱交換器を通じて空気中の熱を奪います。この冷却プロセスは温度を下げるだけでなく、空気中の水分を結露させて取り除く「除湿」の役割も担います。冷却方式には、冷媒を循環させる圧縮機冷却や、間接冷却などの種類があります。
加湿器を使用します。槽内の湿度センサーが乾燥を検知した場合、水蒸気を導入したり、霧を生成したりして水分を供給します。槽内の奥下にあるパン(水槽)に水を張り、ヒーターで加熱して気化させる方式などが一般的です。
前述の冷却器(冷却コイル)や、脱湿材を使用します。空気中の過剰な水分を除去し、湿度を低下させます。
これらの加熱・冷却・加湿・除湿といった機能は、勝手に動作するわけではありません。槽内の環境を均一かつ正確に保つために、以下のような制御サイクルが組まれています。
まず、槽内の各所(上下左右や中央など)に設置された「温湿度センサー」が、現在の空気の状態を感知します。次に、その信号が「調節器(コントローラー)」に入力されます。調節器は設定値と現在値のズレを計算し、加熱器や冷却器などの各デバイスに出力を指令します。
そして、調整された空気は「ファン」によって槽内全体に送り出され、循環します。空気の取り入れ口と吹き出し口を通じて風を回すことで、試験体周辺の環境を一定に保とうとするのです。
恒温恒湿器を使用するエンジニアが特に注意すべき点は、槽内の「温度分布」と「湿度の変動」です。
原理上、小さな箱の中に「熱い部分(加熱器)」「冷たい部分(冷却器)」「湿気を与える部分(加湿器)」が同居しているため、どうしても場所による温度・湿度のムラが生じやすくなります。例えば、IEC規格などでは9点測定による性能確認が定められていますが、条件が良い設定でも場所によって温度差が生じることがあります。
特に相対湿度は温度変化に非常に敏感です。一般的に常温付近では、温度が1℃上昇すると相対湿度は約3%低下します。そのため、わずかな温度分布のズレが、大きな湿度のズレとして現れることがあります。加湿用の水が蒸発する際にも分布への影響が出ることがあるため、厳密な試験を行う場合は、試験体周辺の温湿度を個別のセンサーで実測することも検討してください。
また、運用には「給水」と「排水」の管理が欠かせません。加湿を行うためには給水タンクへの水の補給が必要であり、除湿を行えば排水が発生します。水漏れ事故を防ぐため、設置時には受け皿を用意し、メンテナンススペースを確保した上で、風通しの良い場所に設置することが推奨されます。



※1 オプションのタンクを増設した場合の連続運転時間
※2 参照元:【PDF】安定性試験チャンバー|ナガノサイエンス公式(https://www.naganoscience.com/ja/wp-content/uploads/2023/11/NST_2023all_1127.pdf)