電子部品の環境試験は、高密度実装や微細化が進む中、温湿度ストレスによる「化学的劣化(マイグレーション)」や「物理的劣化(クラック)」を未然に防ぐための最重要工程です。
本記事では、JEDECやIEC規格などで求められる代表的な試験内容と、数千時間の長期試験を成功させるための装置選定のポイントを解説します。
85℃/85%RHの環境下で1,000時間保持するなど、湿気による絶縁劣化や金属腐食を評価する試験です。 近年は、通電(電圧印加)状態で実施する「THB(Temperature Humidity Bias)試験」が主流です。
試験の主な目的は、パッケージや封止樹脂の吸湿による膨張・剥離、金属端子の腐食、樹脂内部のイオンマイグレーション(配線間のショート)など、湿気によって生じる化学的・物理的な劣化を評価すること。電子部品が長期間湿潤環境に晒される際の信頼性を検証するうえで欠かせない試験です。
配線の微細化に伴い重要度が増しています。
「85/85試験では時間がかかりすぎる(1,000時間≒約42日)」という課題に対し、100℃以上の温度と圧力釜のような高圧環境を用いて、数日(96時間等)で同等の劣化を再現する加速試験です。
開発サイクルの短縮化に伴い、従来の85/85からHASTへ移行するケースが増えていますが、装置にはより厳密な結露防止制御が求められます。
高温(例:+125℃)と低温(例:-40℃)の環境を一定の昇温・降温レートで交互に繰り返す試験です。
電子部品は異なる熱膨張係数を持つ複数の材料で構成されており、温度変化の繰り返しによってはんだ接合部や樹脂界面に疲労が蓄積し、クラックや剥離が発生することがあります。熱応力に対する耐久性を評価するのが温度サイクル試験です。
特定の高温または低温環境下に部品を置き、能力を評価します。「保存試験」は非動作状態(通電なし)で一定期間保存した後に品質を評価する試験。
一方、「動作試験」は高温または低温の環境下で部品を実際に動作させ、要求される機能や性能を満たしているかを確認するものです。
「温度変化速度」や「回復時間」といった環境試験機の時間制御性能が、試験の再現性を左右します。設定したプロファイルを環境試験機が忠実に実行できなければ、DUT(供試品)に計画通りのストレスを与えられず、評価結果にばらつきが出る可能性も。
特に恒温恒湿試験においては「共有槽のドア開閉によって温湿度が変動する」といった、結果に影響するアクシデントが起こりやすいので、素早い回復性能を持つ環境試験機を選ぶのが重要です。
槽内の温度・湿度分布が均一であることは、正確な評価の前提です。DUTの設置位置によって環境が異なると(温度分布不均一)、厳密な比較評価はできません。
特に通電試験のような「発熱」を伴う試験では、熱負荷を冷却・処理し、近接するDUT同士が熱干渉しない配置や、風速を均一にする性能が問われます。槽内環境の均一性が、試験データの信頼性を確保する鍵です。
正しい試験の遂行には、リスク防止機能とトレーサビリティ(試験記録)が不可欠です。「結露」による短絡や絶縁性低下、あるいは加湿用の水の汚染や槽内汚染による腐食は、評価を誤らせる致命的な失敗要因になります。
リスクを未然に防ぐ対策を実施し、校正された機器による正確なログを残すことが、試験結果の信頼性を保証するために必要です。
担当者のリソースを単純な試験監視から解放し、高付加価値な分析・評価業務に集中させることが、運用設計の重要な目的です。試験スケジュールの自動化や温湿度安定時間の短縮、設置面積あたりの台数を増やせる「段積み(スタック)対応機」を選定することなどによるスループット向上が求められます。
また、データ取得の自動化やリモート監視も、担当者の工数を直接削減する有効な手段となるでしょう。長期的に高い稼働率を支えるメンテナンス性も、効率化に欠かせない要素です。
DUTの温度が安定する前に検査を行うと、データがばらつくことがあります。特に温度に敏感な部品は注意が必要です。
対策として、試験温度に到達した後、供試品の表面温度が安定するまで十分待ってから検査しましょう。室温に戻して検査する際も、同様に温度安定の待ち時間が必要です。
槽内の空気循環が悪い場合や、DUTが循環風を遮る場合などに、「温度分布不均一」が発生する傾向があります。発熱するDUTが近接している場合も同様です。
湿度分布不均一は設置場所による結果の違いにつながります。対策は、事前に槽内の温度分布を把握し、DUTの配置を検討すること。基板などは風の流れを妨げない工夫も有効です。
試験機の保守・点検や校正に不備がある場合、狙い通りの温度変化にならないことがあります。日常点検と定期点検(校正)を計画的かつ確実に実施し、装置が本来持つ性能を維持することが重要です。
電子部品の環境試験には、目的や評価内容に応じて多様な手法があります。信頼性を確保するうえで、試験条件を再現できる装置選定と、効率的な運用設計が欠かせません。
各試験に適切な環境試験機を選ぶことで、評価精度の向上とコスト削減を両立できます。
環境試験の課題をクリアする恒温恒湿器を選ぶには、各メーカーの得意分野と活用シーンを知ることが大切です。このメディアでは、評価担当者が条件に合うメーカーを見極められるよう、各社の強みを整理して紹介しています。


※1 オプションのタンクを増設した場合の連続運転時間
※2 参照元:【PDF】安定性試験チャンバー|ナガノサイエンス公式(https://www.naganoscience.com/ja/wp-content/uploads/2023/11/NST_2023all_1127.pdf)