恒温恒湿器のバリデーションを、JISとISO/IEC 17025の要件に基づき、実施手順と精度基準まで解説します。
バリデーションとは、装置や工程が「あらかじめ期待された結果を与えることを検証し、文書として残す行為」を指す考え方です。
もともとGMP省令領域で確立された概念ですが、電子部品・半導体分野でも同じ考え方が求められています。理由は明確で、温湿度試験の結果が製品寿命や信頼性の根拠として顧客や第三者監査に提出されるためです。
装置単体の校正だけでは、有効空間内で供試品が実際に曝される温湿度が仕様どおりかを保証できません。JEITAの信頼性評価ガイドでも、温度試験槽内の分布不均一や供試品配置が試験結果に影響し得る点が失敗事例として明示されており、分布・偏差・再現性まで含めた「バリデーション」視点が不可欠となります。
DQ(Design Qualification)では、恒温恒湿器に求める温度範囲・湿度範囲・容量・温度変化速度などを要求仕様書として文書化します。続くIQ(Installation Qualification)では、据付後に構成部材・センサー・記録系が仕様どおりに設置されたかを確認します。
電子部品向けの恒温恒湿器では、JIS C 60068-3-5:2020が推奨する標準大気条件(温度15〜35℃、相対湿度25〜75%、気圧86〜106kPa)を満たす設置環境や、電源・排気の適合まで含めて確認しておくことが実務上のポイントとなります。
参照元:kikakurui.com「JIS C 60068-3-5:2020」(https://kikakurui.com/c60/C60068-3-5-2020-01.html)
OQ(Operational Qualification)は、無負荷の状態で恒温恒湿器が仕様どおりの性能を発揮するかを検証する段階です。到達温度、温度変動、温度勾配、空間温度偏差、温度変化速度などを評価する内容は、JIS C 60068-3-5/3-6が規定する「温度試験槽・温湿度試験槽の性能確認」に相当します。
続くPQ(Performance Qualification)では、実際の供試品を投入した負荷ありの条件で、試験目的に即した再現性と安定性を継続的に確認します。運用面では、ISO/IEC 17025認定校正機関が発行する校正証明書によって国家計量標準へのトレーサビリティを担保し、OQ/PQと組み合わせて維持していく形が実務標準となるでしょう。
参照元:エスペック株式会社「ISO/IEC17025(JAB)認定校正」(https://www.espec.co.jp/testing-rental/proof/iso-iec.html)
IEC 60068-3-5:2018と一致するJIS C 60068-3-5:2020は、負荷のない状態の温度試験槽が耐候性試験の要求事項に適合しているかを、統一的かつ再現性のある方法で確認するための規格です。
具体的には、温度検出器を有効空間の隅8点と中心1点の合計9点に配置し、容量が2000Lを超える大型槽では各壁面の中心にも追加して15点以上とすることが定められています。測定は温度安定後に30分以上、10回以上の等間隔測定を行い、各測定点の標準偏差から±2σn-1として温度変動を求めます。
さらに9点の平均温度の最大差分を温度勾配、中心と各測定点の平均温度の差分の最大絶対値を空間温度偏差として算出。温湿度試験槽についてはJIS C 60068-3-6:2020が並行して規定しており、湿度側の評価項目も同じ枠組みで整理されています。
参照元:kikakurui.com「JIS C 60068-3-5:2020」(https://kikakurui.com/c60/C60068-3-5-2020-01.html)
ISO/IEC 17025は、試験所や校正機関の技術的能力を評価するための国際規格です。国内では公益財団法人 日本適合性認定協会(JAB)や、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)配下のIAJapanが認定機関として運用しています。
エスペックはJABから温度試験槽・温湿度試験槽の校正機関として認定されており、JQAはNITE(JCSS)およびA2LAから認定を受け、恒温・恒湿槽を含む幅広い温湿度計測器の校正を担っています。
認定校正を選ぶ判断基準としては、槽の種類・温湿度範囲・不確かさに加え、IATF16949など外部試験所要件の充足可否まで含めて検討することが望まれます。
参照元:一般財団法人 日本品質保証機構(JQA)「温度・湿度」(https://www.jqa.jp/service_list/measure/service/temperature_humidity/temperature_humidity.html)
実務では、次の4点を運用ルールに組み込むことが有効です。
参照元:ヤマト科学株式会社「ISO/IEC 17025:2017認定 温度・温湿度測定試験のご案内」(https://www.yamato-net.co.jp/product/engineering/testlab/)
参照元:エスペック株式会社「ISO/IEC17025(JAB)認定校正」(https://www.espec.co.jp/testing-rental/proof/iso-iec.html)
恒温恒湿器のバリデーションは、DQ・IQ・OQ・PQの4段階を軸に、JIS C 60068-3-5/3-6が示す温湿度分布測定と、ISO/IEC 17025認定校正によるトレーサビリティ確保を組み合わせて運用することが実務標準です。
分布・偏差・不確かさまで含めた設計と記録によって、電子部品試験結果の信頼性を根拠づけていくことが求められます。



※1 オプションのタンクを増設した場合の連続運転時間
※2 参照元:【PDF】安定性試験チャンバー|ナガノサイエンス公式(https://www.naganoscience.com/ja/wp-content/uploads/2023/11/NST_2023all_1127.pdf)