恒温恒湿器の電気代は、運用改善と省エネ機種への更新、補助金活用で大きく圧縮できます。管理者向けに要点を解説しています。
恒温恒湿器の電気代が上昇し続ける背景には、法人向け電気料金そのものの高騰があります。
LNGや石炭などの燃料価格の上昇、再生可能エネルギー発電促進賦課金の増加が重なり、産業用の平均単価は震災前(2010年度)比で約74%も高騰。使用電力量が変わらなくても、請求額は約1.7倍に膨らんでいる計算です。
恒温恒湿器は冷凍機・ヒーター・加湿器・ファンが常時稼働するため、試験室のランニングコストの大半を電気代が占めます。
富士電機が公開するシャーシベンチ室設備の事例では、電気代だけで年間15,000千円(1,500万円)規模に達しており、経営インパクトは無視できません。
参照元:関西電力(https://sol.kepco.jp/useful/taiyoko/w/kojyo_denkidai/)
参照元:富士電機(https://www.fujielectric.co.jp/about/column/detail/environmental_testing_cost.html)
最も費用対効果が高い節電策は、運用の見直しです。試験仕様の許容範囲内で設定温度を1℃緩和するだけで、熱源設備のエネルギー消費量を約10%削減できると試算されています。
加湿量が支配的な高湿試験では、湿度を数%RH緩めるだけでも加湿器の負荷が下がり、消費電力の低減が期待できます。
次に有効なのが、夜間・休日の連続運転の見直しです。試験が入っていない時間帯は停止または待機モードへ移行するルールを整備しましょう。
参照元:環境省(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/search/pdf/01_143.pdf)
設備側に触れない範囲でも、清掃と点検の徹底で明確な削減効果が得られます。環境省の試算では、2週間に1度の頻度で室外機フィンや室内機フィルタを清掃した場合、冷房使用時で約4%、暖房使用時で約6%の消費電力を抑えられるとされています。導入コストがかからない点で、まず着手すべき対策といえます。
ほかにも、恒温恒湿器の吸排気口周りを整理し、放熱スペースを確保することで冷凍機効率の改善することも挙げられます。扉の開閉頻度を減らす、扉パッキンの劣化を定期点検する、冷媒・冷水配管の保温材の劣化や欠損を補修する、といった項目をチェックリスト化し、月次点検に組み込むと管理精度が高まります。
とくに高温配管への断熱強化は放熱ロスの削減につながるため、周辺配管も含めて見直しましょう。
参照元:株式会社カナデン(https://products.kanaden.co.jp/labo/energy-saving/factory-equipment/)
運用改善で限界に達したら、省エネタイプへのリプレイスが次の打ち手となります。10年以上前の恒温恒湿器を使い続けていると、消費電力ベースで数倍の差が生じることがあります。
試験品質を維持しつつ電気代を圧縮したいなら、稼働時間の長い機器から優先的にリプレイス試算を行うのが合理的です。
省エネ・高信頼の新冷凍システムを備えた最新機種は、カスタマイズ性も高まっており、既存の試験条件を損なわずに置き換えることも可能でしょう。
電気代削減の鍵は、恒温恒湿器単体だけでなく周辺インフラの見直しにあります。富士電機の事例では、複数チラーを高効率機に更新し台数制御を最適化することで、エネルギー効率を約20%改善しました。
また、外気処理機(外調機)と制御を組み合わせるとエネルギーを約60%削減、既存設備・制御の徹底見直しでは約70%削減、冬季フリークーリングの導入では年間約300MWhの削減という結果も報告されています。
いずれの事例も、単に高効率機を導入するだけでなく、負荷状況をオンラインで測定し、負荷追従可能な制御へ切り替える「最適化」がセットになっています。恒温恒湿器の設定値だけを見直すのではなく、冷水温度・流量・外気条件を含めた試験室全体のエネルギーフローを俯瞰することが、削減率を最大化する近道です。
参照元:富士電機(https://www.fujielectric.co.jp/about/column/detail/environmental_testing_cost.html)
リプレイス投資の回収期間は、省エネ補助金の活用で大きく短縮できます。
一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が執行する「省エネ・非化石転換補助金」は、事業区分・申請枠・企業規模により導入費用の1/5〜2/3が補助対象となる制度で、恒温恒湿器やチラー、外調機など試験室のエネルギー消費に関わる幅広い設備更新が対象になり得ます(多くのケースで想定される設備単位型(Ⅲ型)の従来枠は補助率1/3以内・上限1億円が目安です)。
もしも経営層に説明する際は、「現行機の年間消費電力量×電力単価=現行電気代」「リプレイス後の想定削減率(例:60〜70%)×現行電気代=年間削減額」「投資額-補助金額÷年間削減額=投資回収年数」という簡易試算のフォーマットに落とし込むと、投資判断が明確になります。
SHIFT事業や省エネルギー設備更新促進事業など複数制度の併用可否も、公募要領で必ず確認しておきましょう。
参照元:省エネ・非化石転換補助金 2026年版特設サイト パンフレット[※PDF](https://sii.or.jp/koujou07r/uploads/r7h_panflet_unite_3.pdf)
参照元:株式会社カナデン(https://products.kanaden.co.jp/labo/energy-saving/factory-equipment/)
恒温恒湿器の電気代削減は、設定温湿度の緩和と清掃という運用改善から始め、インバータ制御機種へのリプレイス、チラーや外調機など周辺インフラの最適化、補助金活用による投資回収期間の短縮へと段階的に進めるとよいでしょう。
試験品質を守りつつ、研究所全体の経営インパクトを最小化する視点で、優先順位を組み立てましょう。



※1 オプションのタンクを増設した場合の連続運転時間
※2 参照元:【PDF】安定性試験チャンバー|ナガノサイエンス公式(https://www.naganoscience.com/ja/wp-content/uploads/2023/11/NST_2023all_1127.pdf)