安定性試験器はICH Q1Aに準拠し、医薬品の使用期限や保存条件を裏付ける品質保証の要となる装置です。選定基準と主要メーカーを解説します。
安定性試験器とは、医薬品・原薬・製剤の品質を、温度と湿度を厳密に制御した環境下で長期間にわたり保存し、経時的な品質変化を評価するための恒温恒湿装置です。
安定性試験は、製造直後だけでなく流通・保管を経て患者に届くまで一貫して品質を保証するための重要な試験で、承認申請時の必須資料の一つと位置付けられています。
取得されるデータは、使用期限や保存条件の設定根拠、および市販後の安定性モニタリングの両方に活用されます。
長期保存試験は、申請予定の保存条件下で製剤の物理化学的・生物学的・微生物学的特性を経時的に測定し、使用期限(有効期間)の設定根拠となるデータを取得する試験です。
室温保存製剤では一般的に25℃±2℃/60%RH±5%RHの条件が採用されます。測定タイミングは、初年度が3か月ごと、2年目が6か月ごと、3年目以降は年1回が標準とされており、承認申請の根幹となる中心データを構成します。
参照元:クリタ分析センター株式会社|医薬品の安定性試験を理解する目的別の種類と適切な保管条件(https://www.kuritabunseki.co.jp/column/stability-test-pharmaceutical/)
加速試験は、高温・高湿条件により品質変化を短期間で予測し、流通時の温度逸脱リスクを評価する試験です。標準条件は40℃±2℃/75%RH±5%RHで、原則6か月間実施します。
この加速試験で含量低下や規格逸脱などの顕著な変化が認められた場合は、より実流通に近い30℃±2℃/65%RH±5%RHで12か月間の中間試験を実施し、有効期間や保存条件の妥当性を再評価します。
参照元:クリタ分析センター株式会社|医薬品の安定性試験を理解する目的別の種類と適切な保管条件(https://www.kuritabunseki.co.jp/column/stability-test-pharmaceutical/)
苛酷試験は、加速試験の温度条件より10℃ずつ高い温度(例:50℃、60℃…)と段階的に上げたり、光・酸素・pHの影響を個別に評価する試験で、分解生成物の特定や劣化メカニズムの理解、包材選定の根拠を得る目的で実施されます。
また、ICH Q1Bに基づく光安定性試験も承認申請に必須です。ISO10977準拠のD65/ID65光源、または白色蛍光灯と近紫外蛍光灯の組み合わせを用い、可視光線120万lux・時以上、近紫外放射エネルギー200W・時/㎡以上の照射条件を満たすため、専用機器が必要となります。
参照元:クリタ分析センター株式会社|安定性試験の光安定性評価が品質保証と安全性に果たす役割(https://www.kuritabunseki.co.jp/column/photostability-stability-test/)
安定性試験器の選定は、ICH準拠のデータ取得と運用継続性を左右する重要な意思決定です。以下確認するべき内容を見ていきましょう。
そのほか、24時間の温湿度連続記録と逸脱時の即時通知、無停電電源装置(UPS)や非常電源によるバックアップ体制、監査証跡や電子記録の改ざん防止といったデータインテグリティ要件も、GMP下の運用では欠かせない選定基準といえるでしょう。
参照元:クリタ分析センター株式会社|医薬品の安定性試験を理解する目的別の種類と適切な保管条件(https://www.kuritabunseki.co.jp/column/stability-test-pharmaceutical/)
GMP省令における適格性評価は、DQ(設計時適格性評価)、IQ(据付時適格性評価)、OQ(運転時適格性評価)、PQ(性能適格性評価)の4段階を順次段階的に進めることが基本とされています。
DQでは設備が目的とする用途に適しているかを確認し、IQでは仕様書に沿った据付・配線・据付環境が要求どおり実施されたかを検証します。OQでは温湿度制御範囲・アラーム動作・センサ校正など予期した運転範囲での作動を確認し、PQでは有負荷条件下の槽内分布や長期変動を含め、良好な再現性で効果的に機能することを実証し文書化します。
GMP施行通知では、影響がなければIQ/OQまたはOQ/PQを同時に実施することも可能とされています。適格性評価は分析機器バリデーションの前提条件であり、試験検査の信頼性保証に必須の評価と位置付けられています。
安定性試験器は用途と規模に応じて複数タイプが提供されています。
設置スペースを抑えつつ試験専用に運用するリーチイン型安定性試験チャンバーは、開発部門や中小規模の試験室へと広く採用。大量ロットや大型製剤を扱う場合は、設置環境に合わせた設計が可能なウォークイン型安定性試験室が選ばれます。
ICH Q1Bに準拠した光源配置とサンプル間の積算照射量均一化を実現する光安定性試験装置、および複数装置の温湿度データを集中管理する環境モニタリングシステムも品質保証体制の中核を担います。
代表的なメーカーとしては、リーチインチャンバー「NSTシリーズ」やウォークインチャンバー「NSWシリーズ」、光安定性試験装置「LTシリーズ」を展開するナガノサイエンス、環境試験機分野で長年の実績を持つエスペックなどが主に挙げられるでしょう。
引用元:Nagano Science(https://www.naganoscience.com/ja/lineup/)
安定性試験器は、ICH Q1A/Q1Bに基づく長期保存試験・加速試験・光安定性試験を支え、医薬品の使用期限や保存条件の科学的根拠を提供する基盤設備です。
制御精度や容量、モニタリング、データインテグリティといった選定基準を踏まえ、DQからPQまでの適格性評価を計画的に実施することが、承認申請とGMP対応の両立に不可欠となります。



※1 オプションのタンクを増設した場合の連続運転時間
※2 参照元:【PDF】安定性試験チャンバー|ナガノサイエンス公式(https://www.naganoscience.com/ja/wp-content/uploads/2023/11/NST_2023all_1127.pdf)