湿度制御を行う恒温恒湿器には、加湿水の給水が欠かせません。手動給水と自動給水の違いを整理し、導入前に確認したい選び方と注意点を解説します。
恒温恒湿器は、槽内の加湿器で水を加熱・蒸発させ、その水蒸気で湿度を上げる仕組みです。たとえばハイパワー恒温恒湿器ARS・ARLシリーズの加湿器は、SUS316製シーズヒーターによる表面蒸発式です。湿度制御を行う機種では、蒸発した分の加湿水を補給し続けなければ運転を続けられません。
一方、同シリーズの温度制御専用モデル(ARG・ARU)には加湿器がなく、加湿水も必要ありません。なお、湿度を0%rhや1%rhに設定しても、湿度制御がONのままだと加湿器には給水されます。槽内に残った加湿水が自然に蒸発するため、低湿度にはなりにくくなります。乾燥状態をつくりたい場合は、湿度制御をOFFにして加湿水を排水する必要があります。
参照元:エスペック株式会社 ハイパワー恒温(恒湿)器 ARシリーズ スタンダードタイプ カタログ(https://www.espec.co.jp/products/catalog/ar02.pdf)
参照元:エスペック株式会社 製品・サービスQ&A(操作・設定)(https://www.espec.co.jp/products/qa/qa02.html)
手動給水は、本体の給水タンクに作業者が純水を補給する方式です。タンク容量は機種によって異なり、ARS・ARLシリーズでは内容積に応じて20Lまたは40L(20L×2)です。
運転できる時間は試験条件によって変わります。機種例として、ヤマト科学の恒温恒湿機IG401(タンク最大20L)は、温度23℃・湿度75%の条件なら10Lの給水で一晩以上運転できます。
配管工事が不要で導入しやすい点がメリットです。ただし、高温高湿の試験ほど水の消費が早く、補給の手間が増えます。長期間使わないときはタンクの排水も必要で、満水時の排水には機種によって約8〜16分かかります。
参照元:エスペック株式会社 ハイパワー恒温(恒湿)器 ARシリーズ スタンダードタイプ カタログ(https://www.espec.co.jp/products/catalog/ar02.pdf)
参照元:埼玉大学 恒温恒湿機(ヤマト科学 IG401)簡易マニュアル(https://spe-lab.mech.saitama-u.ac.jp/T&H-regulator.pdf)
参照元:エスペック株式会社 恒温(恒湿)器 取扱説明書 第5章 点検・保守(https://www.espec.co.jp/support/daily_check/data/07-07-01.pdf)
自動給水(連続給水)は、純水の供給設備と装置を配管で直接つなぎ、加湿用の純水を連続して送る方式です。プラチナスJシリーズでは「連続給水(純水供給口)」をオプションで装備できます。標準装備の給水タンクでの運転に切り替えることも可能です。
社内に純水設備がない場合は、純水製造装置を組み合わせます。たとえば純水製造装置WS-1は、導電率10μS/cm以下の純水を水温25℃で毎時12L生産します。なお、装置への接続作業はユーザー側で行います。
この方式なら補給作業が不要になり、長時間試験や夜間・休日をまたぐ連続運転に対応しやすくなります。一方で、オプション装備や配管、純水製造装置の用意が必要になるため、手動給水よりも導入時の準備が増えます。
参照元:エスペック株式会社 低温恒温(恒湿)器・恒温恒湿器 プラチナスJシリーズ(https://www.espec.co.jp/products/env-test/pj/)
参照元:エスペック株式会社 ハイパワー恒温(恒湿)器 ARシリーズ スタンダードタイプ カタログ(https://www.espec.co.jp/products/catalog/ar02.pdf)
手動給水のまま補給回数を減らしたい場合は、水蒸気を回収・再利用する機種も選択肢になります。楠本化成エタック事業部の低温恒温恒湿器「HIFLEX NEO E」は、水蒸気を回収・再利用することで、1回の給水で85℃85%・最長1,000時間の連続運転ができます。加湿水を殺菌して水質を保つ機能も備えています。
参照元:アズサイエンス株式会社 低温恒温恒湿器・低温恒湿器 HIFLEX NEO E(https://pr.mono.ipros.com/azscience/product/detail/2000936541/)
短時間の試験や不定期の使用であれば、手動給水で十分なケースが多くあります。試験前にタンクを満たしておけば、途中で補給せずに試験を終えられるためです。
反対に、長期間の連続運転では水の補給が大きな負担になり、高温高湿の試験が続くほど補給回数も増えます。休日をまたぐ耐久試験や長期休暇中も運転を続けたい場合は、自動給水が向いています。純水製造装置やRO(逆浸透)膜浄水装置と組み合わせれば、夜間や無人の時間帯も連続運転しやすくなります。
自動給水を採用するには、純水の供給元と配管が必要です。自社の純水設備を使うのか、純水製造装置を新たに置くのかを事前に決めておきましょう。
供給条件も機種ごとに決まっています。ARシリーズの純水供給口の場合、条件は水圧0.05〜0.50MPa(ゲージ圧)、導電率0.1〜10μS/cmです。接続できる配管も鋼管または塩化ビニール管に限られます。プラチナスJシリーズで既存の純水設備を使う場合は、減圧弁付きの連続給水を選ぶ必要があります。
あわせて、設置場所の環境も確認が必要です。ARシリーズの運転可能条件は、外囲温度0〜40℃、外囲湿度75%rhまでです。
参照元:エスペック株式会社 ハイパワー恒温(恒湿)器 ARシリーズ スタンダードタイプ カタログ(https://www.espec.co.jp/products/catalog/ar02.pdf)
参照元:エスペック株式会社 低温恒温(恒湿)器・恒温恒湿器 プラチナスJシリーズ(https://www.espec.co.jp/products/env-test/pj/)
加湿水には、メーカーが指定する導電率の純水を使います。エスペック製品の指定は導電率0.1〜10μS/cmの純水で、水道水と超純水はどちらも使用を避けます。日本の一般的な水道水の導電率は100〜400μS/cm程度で、指定範囲を大きく上回ります。
水道水にはカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が含まれています。加湿で水が蒸発すると、これがスケール(蒸発残留物)として析出し、加湿部に付着します。一度析出したスケールは再び水に溶けないため、トラブルの原因になります。一方の超純水は不純物を溶かし込みやすく、金属配管を腐食させるおそれがあります。
参照元:エスペック株式会社 製品・サービスQ&A(操作・設定)(https://www.espec.co.jp/products/qa/qa02.html)
参照元:オリオン機械株式会社 加湿水の水質管理(https://www.orionkikai.co.jp/technology/pap/water-supply/)
給水タンクに水が1か月以上たまったままだと、水が腐敗するおそれがあります。そのまま使い続けると、水回路部品の動作不良や、加湿ヒーター・湿球ウイックの寿命低下につながります。そのため、給水タンク(内部のストレーナを含む)と加湿皿は、それぞれ月1回を目安に清掃します。
加湿皿や加湿用ヒーターには、運転とともにゴミや不純物が付着していきます。清掃ではブラシなどで表面の付着物を取り除きます。試験が終わるたびに加湿皿の水を排出しておくと、付着物がたまりにくくなります。
参照元:エスペック株式会社 恒温(恒湿)器 取扱説明書 第5章 点検・保守(https://www.espec.co.jp/support/daily_check/data/07-07-01.pdf)
加湿機能や連続給水を備えた装置では、万一の漏水に備える対策が推奨されています。具体的には、装置の下に防水パンを設置し、漏水を知らせる漏水検知システムを取り付けます。
また、1か月以上湿度制御を行わない場合は、雑菌の繁殖を防ぐため給水タンクの水を抜き、槽内も排水しておきます。ただし「常時給水」に設定している機器では、水を抜くと減水などの警報が出るため、水抜きは行いません。
参照元:エスペック株式会社 低温恒温(恒湿)器・恒温恒湿器 プラチナスJシリーズ(https://www.espec.co.jp/products/env-test/pj/)
参照元:エスペック株式会社 製品・サービスQ&A(操作・設定)(https://www.espec.co.jp/products/qa/qa02.html)
恒温恒湿器の給水方式には、給水タンクに純水を補給する手動給水と、純水設備から連続供給する自動給水があります。短時間・不定期の試験なら手動給水、長時間の試験や休日をまたぐ連続試験なら自動給水が向いています。どちらの方式でも、指定導電率の純水を使い、タンクや加湿皿の定期清掃と漏水対策を行うことが、安定した試験と装置の長寿命化につながります。



※1 オプションのタンクを増設した場合の連続運転時間
※2 参照元:【PDF】安定性試験チャンバー|ナガノサイエンス公式(https://www.naganoscience.com/ja/wp-content/uploads/2023/11/NST_2023all_1127.pdf)